平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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ジェイムズ・エルロイ『ブラック・ダリア』(文春文庫)

ブラック・ダリア (文春文庫)

ブラック・ダリア (文春文庫)

1947年1月15日、ロス市内の空地で若い女性の惨殺死体が発見された。スターの座に憧れて都会に引き寄せられた女性を待つ、ひとつの回答だった。漆黒の髪にいつも黒ずくめのドレス、だれもが知っていて、だれも知らない女。いつしか事件は〈ブラック・ダリア事件〉と呼ばれるようになった――。“ロス暗黒史”四部作の、その一。(粗筋紹介より引用)

1987年発表。1994年3月、翻訳。



当時のベスト10関連で話題になった作品。ということで買った割には今頃読む。実際に起きて迷宮入りした「ブラック・ダリア事件」(エリザベス・ショート事件)を題材としている。

読んでも読んでも終わらない。いったい何が本筋なのかわからなくなるぐらい色々な事が、これでもかとばかりに綿密に書かれ、しかも熱すぎる情念と圧倒的な力で迫ってくるから、読む方の精神力を削いでしまう。読み終わったときは思わずホッとしてしまった。

それにしても、ブラック・ダリアと呼ばれる女性、エリザベス・ショートの魅力というのがよくわからなかった。大の男二人、しかも凶悪な犯罪者を見てきたはずの警官2人が、周囲に不幸をまき散らすとわかっていながらも取り憑かれたかのように残像を追いかけ、狂っていくその姿を見てしまうと、余計にその魅力がわからない。そんな不可解さすら超越したところが、この作品の面白さなのかもしれないが。

元々暗黒小説というジャンルが苦手なこともあり、構えながら読んでしまったことが、本作品の面白さを見つけられなかった原因かもしれない。それなりに事前情報を持っていたことが徒になったかもしれないが、例え知らなくてもこの文章を読み始めただけで、苦手な人は構えてしまうだろう。それぐらいの力を持っている作品ではある。