名探偵夢水清志郎の事件簿1 名探偵VS.怪人幻影師 (講談社青い鳥文庫)
- 作者: はやみねかおる,佐藤友生
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2011/02/10
- メディア: 文庫
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大人気だった名探偵夢水清志郎シリーズが2年ぶりに復活。新たに小学六年生・二年生の姉妹とともに事件に立ち向かう。さらに伊緒の新しい同級生として、人気子役タレント中島ルイも加わる。本作で謎の怪人“幻影師”が誕生することとなるため、この怪人との対決がシリーズの中心になると思われる。
ジュニア小説に本格ミステリのエッセンスを存分に振りまいたこのシリーズは、子供だけでなく大人にも人気のあったシリーズであったが、巻が進むに連れてやや難解になってきたところがあった。それは多分亜衣たちの成長に合わせたところもあったのだろう。
新シリーズは小学六年生と二年生の宮里姉妹たちを主人公とすることで、対象年齢をやや下げてきた。夢水の行動パターンと推理力は全く変わらないが、敵側に幻影師というキャラクターを配することにより、事件の構造や謎をよりわかりやすい設定にしている。そういう意味では、子どもたちにミステリの楽しさを伝えるという姿勢をより明確にしたといえよう。
本作では新シリーズの顔見せといった趣が強く、新キャラクターの紹介や幻影師の誕生といった点に筆を割かざるを得ず、事件の謎そのものが弱くなっていることが残念。せっかくのレトロシティという設定も生かし切れていない。どうせなら、「怪人二十面相」のように闇に蠢く怪人の姿を書いてほしかったのだが、それはさすがに作者の本意ではないだろうから、仕方がないか。
それにしてもレトロシティという舞台ならいざ知らず、現代を舞台にしてどうやって幻影師というキャラクターを生かしていこうというのか。マニアである作者のことだから、二十面相シリーズの後期が、変なコスプレおじさんvs少年探偵団のごっこ遊びにまで堕ちてしまった(それはそれで面白かったが)ことは十二分に承知しているだろう。とりあえず、小学生に読ませるには充分安心できる仕上がりかな。
それにしても、『黒死館殺人事件』を面白いと思う小学六年生がいるのだろうか。そんな小学生に会ってみたいものだ。あと作者にお願いしたいのは、安易に亜衣たちとの「夢のコラボレーション」みたいな作品を書かないで、ということかな。