平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

漂泊旦那の日記です。本の感想とサイト更新情報が中心です。偶に雑談など。

藤子・F・不二雄『パジャママン』(小学館 藤子・F・不二雄大全集)

藤子・F・不二雄大全集第2期第2回配本の一冊。『テレビマガジン』『たのしい幼稚園』『おともだち』『ディズニーランド』の講談社幼年向け雑誌で1973年12月号〜1974年11月号の約1年間連載されていたヒーロー作品が単行本初収録。他に『てれびくん』1976年6月創刊号〜10月号に連載された「きゃぷてんボン」、『おともだち』1975年4月号に掲載された絵物語「とんでこいようちえんバス」(原案みなとだいすけ)を収録。
藤子Fといえば小学館専属のイメージがあるが、一時期は講談社の学習雑誌に多数連載を持っていた。そのつながりなのかどうかはわからないが、『ドラえもん』などを連載している裏で、このような幼年向け作品も執筆していたが、今までまとめられることはなかった。全集のよいところは、「パジャママン」このような作品が一冊で読めること。幼年向けということもあり、その他愛なさは大人が読むにはちょっとしんどいところもあるが、随所に他作品とつながるようなアイディアが見られ、藤子F読者はその辺も楽しむことができるのではないか。「きゃぷてんボン」は発明家だがだめな父親としっかり物の息子という「パパは天さい」と似たような設定。ファンクラブの会誌で読んだことがある作品だが、個人的にはもう少し続きを見たかったところ。絵物語は小品。1970年代にこういう作品を書いていたこと自体に驚く。原案者がいるようだが、その辺の作品背景は解説で書いてほしかった。

こうして幼年物をまとめて読むと、『漫画少年』の頃からの精神を最後まで書き続けたのは藤子Fだったんだと気付かされる。手塚治虫も晩年まで幼年物を描いていたが、この分野では藤子Fに敵わなかったのではないか。ずっと描き続けた、という点も含めて。