平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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佐々木丸美『花嫁人形』(講談社文庫)

花嫁人形 (講談社文庫)

花嫁人形 (講談社文庫)

人格者の父、しとやかな母、何不自由ない四人の姉たち。そんな家族の中で、私はひとり愛に無縁だった。読み書きさえとりあげられ、大人たちの打算にもてあそばれるみじめな孤児の私の心にも、しかし、激しい恋はひっそりと芽生えていった……。冷酷な宿命に耐えて生きる一人の少女の愛と哀しみを描く、「雪の断章」「忘れな草」につづく長編小説。(粗筋紹介より引用)。

1979年2月、講談社より刊行。1987年5月、文庫化。



『雪の断章』『忘れな草』の姉妹編で、「孤児四部作」の三作目。四作目は『風花の里』。『雪の断章』の飛鳥、『忘れな草』の葵と続く本作品の主人公は昭菜。メルヘンチックで、時折詩情を挟むような文章は変わらない。また例によって禾田氏が黒幕として存在するところもいっしょ。北の街で、複雑すぎる一族の感情が絡まりあうところも変わらない。そして、物語の流れを削ぐような説明を省き、ともすれば読者を置いてきぼりにするぐらいの展開で物語が進むところも変わらない。だから、作者のことが好きな読者でないと、この作品についていけないことも事実。前作よりは読みやすかったが、それでもしんどいことには変わりない。

ファンタジーといってしまえばそれまでなんだが、読んでいてもつらいなあ。それにしても奈津子の設定なんて、『雪の断章』の頃から頭にあったのだろうか。酷いと言ってしまえばそれまでだが。