平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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佐々木丸美『雪の断章』(講談社文庫)

雪の断章 (講談社文庫)

雪の断章 (講談社文庫)

孤児飛鳥は運命の糸にたぐられて青年に出逢った。札幌の大通り公園の、雪舞う冬の夜に、テレビ塔まぶしい夏の午後に。苦しさの果てに待ちうけていたこの神秘的なめぐりあい。孤独がやさしさを求め、歳月が愛をはぐくむ。だが、殺人事件の暗い影が行く手に……。北の都を舞台に感動の愛をつむぐ長編ロマン。(粗筋紹介より引用)

1975年、「二千万円テレビ懸賞小説」に佳作入選。同年、講談社より刊行。



当時からミステリファンの友人たちに佐々木丸美ファンは多かったのだが、私はどうしても斉藤由貴が主演した映画の原作、というイメージ以上のものを持てなかった。味戸ケイコによる講談社文庫のカバーが手を伸ばしづらかったからかもしれない。一時期絶版状態だったが、創元推理文庫による復刊や、ブッキングから「佐々木丸美コレクション」全18巻が出版されたことから、再評価が始まった。

まあそういうことで、というわけではないが、今頃になって読んでみた。札幌、孤児、孤独、少女などのキーワード。メルヘンチックというか、叙情的というか。少女の成長を見守る周囲の姿が感動的と言ってしまえば簡単なのだろうが、愛憎の感情が交差するやり取りや、社会に対する斜めから見た視線などが読んでいて痛々しさを感じてしまうのは、自分が年を取った証拠か。それにしても、飛鳥の一人称による視点で物語が進み、それが独善に満ちた部分や刃を振りかざしたような部分が多かったせいか、読んでいてキツイ。

この作品、色々な方向から読むことができそうだな。ただ、自分には合わなかった。