- 作者: 深谷忠記
- 出版社/メーカー: 徳間書店
- 発売日: 2010/07/16
- メディア: 単行本
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ずっと音信不通だった2人は、運命の糸に導かれるようにして、殺人事件の法廷で再会した。一方は裁く側の人間、他方は裁かれる側の人間として――。
裁判の行方は? そして2人は……?
(帯より引用)
2010年7月、書き下ろし刊行。
志村雅江は夫と別れ、子どもとも会うことができず、コンビニで働いてやっと生活している状態。しかも働かず男好きな母親が部屋に居座っている。畑中英理佳は東大卒の裁判官。年上の恋人はいるが結婚はしていない。何かに付け世話を焼く母親に複雑な思いを抱く毎日。そんな二人が再会したのは殺人事件の法廷。
深谷は社会派ともいえる推理小説を書き下ろし続けているが、今回の作品は裁判員裁判と子にまとわりつく母親という2つのテーマを取り扱っている。タイムリーな題材を扱って、本格推理小説を書き続けようとする深谷の姿勢には感心するが、今回のネタは正直誰でも予想が付くところだっただろう。それ以上の「えっ」と言わせるものが何もなかったことが残念。続く裁判員制度の欠点を付くような展開も、今一つ面白味に欠ける。裁判員制度を検討する段階で、一度は問題点として指摘されていてもおかしくないような内容だからだ。少なくとも、作者が狙ったほどの効果が得られているとは思えない。
かつての親友が19年後に再び交錯する運命と、社会派のテーマを組み合わせようとした作者の狙いはわかる(他に見落としていたらごめん)が、ひねりが足りず面白くなかったというのが正直なところ。もうちょっと何とかできたんじゃないかなあ。