- 作者: ミネットウォルターズ,Minette Walters,成川裕子
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2000/08
- メディア: 文庫
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1993年発表。1994年、アメリカ探偵作家クラブ(MWA)賞最優秀長編賞受賞。1995年翻訳、単行本として出版された作品の2000年文庫化。
1995年に週刊文春、このミスの両方で海外部門第1位を取っていたので、文庫化と同時に購入していたのだが、読んだのは今頃。まあ、いつものことだ。
「彫刻家」と呼ばれる身長180cm、体重165kgと巨体の女性オリーヴが主人公の1人であり、さらに彼女の犯行は母親と妹を切り刻んで並び替えたというものだから、どちらかといえばサイコものを想像させるのだが、読んでみるとそのようなグロさは感じさせない。とはいえ、ここで書かれている人間心理の恐ろしさは相当なものだが。
ストーリーそのものは思っていたよりストレートなもの。動機不明の残虐な事件を引き起こした奇怪な女性のノンフィクションものを書くようにエージェントのアイリスから要請されたフリーライターのロズことロザリンド・リーが、気の進まないままオリーヴと面会して興味を持ち、調べていくうちに彼女が犯人であるか疑問を持つようになる。さらにオリーヴを取り調べた元警官ハルとのロマンスまで加わる。やや長い作品ながら、読み始めると止まらない面白さである。こんなエピソードいらないだろうと思っていると、実はそれが意外な伏線だったりするのだから、気を抜くことも出来ない。この作品の一番すごいところは、オリーヴという女性の造形と、それを前面に押し出さないことによって内容に深みを与えたところだろうか。
ということで今更ながら読み、今更ながら面白かったなーと言うだけの感想でした。あと、野崎六助の解説ならぬ作者論はいらなかったんじゃないの?