- 作者: 柄澤齊
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2006/06/27
- メディア: 文庫
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「ロンド」の名を冠した未知の画家志村徹の古典はpart3まで開かれ、そのたびに学芸員・津牧は名画そっくりにしたて上げられた死体を目の当たりにしていた。犯人は死体で作られた絵を撮影、それをもとに描いた絵を犯行声明のように美術雑誌に送りつけてきていた。そんななか、津牧の恋人である丹野みどりが姿を消す。そして彼のもとに届いたpart4の案内状には、奇妙な数字が並んでいた。数字に導かれて行き着いた謎めいた山荘で、彼はいったい何を知ることになるのか? 幻の絵画『ロンド』とはいかなる作品なのか? ミステリ作家・柄澤齊誕生の華麗なる記念碑!(下巻粗筋より引用、一部加筆)
2002年に出た単行本を2006年に文庫化。
作者は現代日本の版画界を代表する一人らしい。そっちの方面には疎いので、当時は初めて聞いた名前だったが。出版時、それなりに騒がれた本だったので、いつか読もうと思いつつ、上下巻という厚さのため積ん読状態だったが、読んでみると一気だった。ただ、有名絵画そのままに仕立て上げられるという設定から、当然本格ミステリなんだと勝手に思っていたが、読み終わってみると実はサスペンスだった。まあ、この長さでつまらない推理を延々と繰り替えされられるよりはずっとよい。
三ヶ桐威という画家や『ロンド』という絵に、周囲の人がそこまで狂ってしまうのか、という点が少々疑問であり、そこは作者の筆力不足だったと思う。ただそこを自ら納得してしまえば、十分に面白い作品だろう。上巻が少々まどろっこしいのは事実だが、下巻の畳みかけは圧巻である。
本音を言ってしまうと、有名と言われている絵画を何一つ知らなかった。知っていたのはせいぜいサロメの話ぐらいである。もし絵画を実際に知っていたら、もう少し受ける印象が違ったかもしれない。