- 作者: 佐藤ラギ
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2003/01
- メディア: 単行本
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2002年、第3回ホラーサスペンス大賞受賞作。
SMに興味のない私にとって、表紙の絵や帯の言葉からの購買意欲は全くわかなかった。これがホラーサスペンス大賞受賞作でなかったら、買うことはなかっただろう。実際に読んでみると、思ったほど強烈でもなかった。大沢在昌がいうように「この世界に引きずり込まれていく自分の心に、恐怖を感じた」ことは全くなかったが。本当のところをいうと、SM小説の世界ってもっと残虐度が強いものだと思っていたが、この小説からはそれほど感じなかった。作者がわざとそうしたのか、単に作者の筆力がなかったのか。
少年を捕まえてからは、途中途中のシーンのみを所々ピックアップする描き方になっており、そのつなぎの部分が簡単に流されている。そのため、フラッシュ写真を途切れ途切れに見せられるだけのイメージしか伝わってこない。少年の妖しさ、この世界の淫靡さなどがもっと書き込まれてもよかったと思うが、そうするとエンターテイメントとして成立するかどうか微妙だし、難しいところかも。少年にファーストフードやホットケーキを与えるシーンが出てくるところなど、作中で少年自身がいうように「甘い」世界で終わってしまったのも、作者の構想内だったのだろうか。
「邪悪ナル世界」と謳うだけの世界を描くべきだったのでは、というのが本音かも。そうなったら、途中で投げ出していただろうが(苦笑)。
作者はマレーシア在住。2003年の第10回日本ホラー小説大賞長編賞候補作にネコ・ヤマモト名義で「蜥蜴」という作品が選ばれているようだが、受賞後に作品を発表していない模様。