平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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ミスター高橋『プロレス影の仕掛人』(講談社+α文庫)

「猪木さん、ここの場面では、ドロップキックを使ってください」

「嫌だよ、高橋。お前、俺のしょっぱいドロップキックをファンに見せて、笑わせるつもりなんだろう」

プロレスを成立させているのは、レスラーの存在だけではない。そこには、リング外で暗躍する数多くの黒幕たちがいるのだ。

25年以上、レフェリー、マッチメイカー、外国人レスラー担当、審判部長として、アントニオ猪木らの試合を影で演出してきた男が、その目で見てきた仕掛人の実体を激白!!(粗筋紹介より引用)

2002年12月に刊行された『マッチメイカー』(ゼニスプランニング)を改題、加筆修正、再編集して2004年に出版。



プロレス界の裏切り者(笑)、元新日本プロレス審判部長ミスター高橋の著作。日本のプロレスもWWEのようにエンターテインメントであることをカミングアウトするべきだ、というのが高橋の主張なのだが、個人的には余計なお世話だとしか思えない。客は金を払ってプロレスを見ているのであって、その裏側を見たいとは思っていない。暴露本を出して、プロレス界のためにやっているなどといっても説得力がない。まあ、ご本人にも色々考えはあるだろうが。

まあ、そんなことを言いながらも楽しんで読んでいる自分がいる。幻想の裏側を知って幻滅するか、あえて自らの脳内にフィルターをかけて幻想を楽しむか。どんな真剣勝負だって、客を取っている興業ならなんらかのフィルターがかかっている。ただのケンカに金を払ってまでみたいとは思わない。映画やお笑いのファンだって、練習シーンやリハーサルをいつも見たいとは思わないだろう。この手の本は、たまーに読むから面白いのであって、あとは素直に自分の目で見たプロレスを楽しめればそれでよい。