- 作者: 伊藤芳朗
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 1999/06
- メディア: 単行本
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『女性セブン』1998年11号〜1999年1号まで連載したものを加筆、再構成。
弁護士である筆者が、自ら担当した少年事件の被告33人の素顔を明かした一冊。連載が始まったのは神戸連続児童殺傷事件から1年後。様々な少年事件が連続し、少年法改正で揺れていた時代である。
筆者は、家族や社会による重圧、不理解などを取り上げ、少年だけが悪いのではない、ということを訴えようとしている。まあわからないでもないが、それって大人の犯罪事件でも一緒なんだよな。普通の犯罪事件でも時々、少年時代の養育に不幸があったとか、家族からの要求に止むに止まれずとか、仕事がなくなって将来に不安があったとか、まあ色々と犯罪に至るまでの「原因」が語られる。しかし同じ状況下でも犯罪を犯していない人はいるわけだし、むしろそちらの方が圧倒的に多い。人の心に治すことのできないような傷を負わせておきながら、太陽のように温かく見守ってほしい、なんて言えるほど簡単ではない。結局それもただの甘えじゃないのか。
結局いちばん傷を負っているのは被害者やその遺族である。そんな単純な前提を忘れて、加害者をどうのこうのいうのは間違っている。本書では一応そのことに触れられているが、それでも立場は加害者側であり、被害者側を放っている。この手の本を読む度に、苛立ちを覚えるのは私だけだろうか。