- 作者: 西澤保彦
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2009/09/01
- メディア: ハードカバー
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一方、その五日前の深夜、辺見祐輔の後輩・曾根崎洋が公園で女性を包丁で脅かしながら性的暴行を加えようと襲いかかったが反撃され、その羽住で自分の腹部を指して死亡する事件があった。女性の行方は不明。曾根崎をよく知る辺見はなにか腑に落ちないものを感じた。(帯より引用)
タック&タカチシリーズ最新刊。2009年書き下ろし。
ファンが待ち焦がれていたタック&タカチシリーズ長編である。シリーズとしては2003年の『黒の貴婦人』(幻冬舎)以来。長編となると2000年『依存』(幻冬舎)以来となる。
作品の舞台は『依存』の後で、タックたちが三回生の夏休みである。タックとタカチはボアン先輩の車に乗ったまま安槻を離れているため、話は主にボアン先輩の目を通して描かれている。キャンパス四人組の進捗状況としては、『依存』からの立ち直りが描かれているのみ。それはそれで大きなテーマであるのだが、9年待ってそれだけ、という肩すかしなところがあるのも事実。さっさと続きを書いてよと言いたい。
事件の方は、二つの殺人事件の謎を、いつものように様々な仮説を立てながら推理するストーリー。事件の絡み具合は結構凝っているが、推理の方は相変わらず出てきた事象をパズルのように組み合わせるだけでそこに絶対的な証拠があるわけではなく、結局はワンオブゼムな解答にしかなっていない。まあ、それが西澤作品だと言ってしまえばそれまでであり、厳密に本格ミステリを定義しようという人でない限り、十分楽しめるパズルストーリーになっている。久しぶりに西澤保彦を読んだが、健在なり、と言い切っていいかな。『依存』を読んでいないと何がなんだかわからない、という話なのだが、シリーズものなのでそこは仕方がない。
『仔羊たちの聖夜』に出てきた安槻署の佐伯刑事、七瀬刑事が再登場。さらに平塚総一郎刑事がシリーズ長編初登場。今後色々と絡みそうな感じですな。次の長編は9年も待たせるようなことはしないでほしい。それとどうせだから、シリーズの既刊は全部幻冬舎文庫で統一しない? 並べたときの見栄え悪すぎるし。