平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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新潮文庫編集部編『帝都東京 殺しの万華鏡』(新潮文庫)

帝都東京 殺しの万華鏡―昭和モダンノンフィクション 事件編 (新潮文庫)

帝都東京 殺しの万華鏡―昭和モダンノンフィクション 事件編 (新潮文庫)

惨!是レガ帝都東京ノ“殺シ”ノ現状ナリ―。戦前、新潮社が発行していた総合月刊誌「日の出」から、事件ノンフィクションを厳選。時空を超えてさすらう修羅たちが、今ここに甦る。刑事本人が綴る猟奇情痴の殺人現場、医学博士が明かす死体鑑定秘話、そして現役警察官・裁判官による鬼気迫る裏座談会…。そのおぞましき本性、脈々と息づく狂気、現代社会に通じる宿業の人間絵巻。(粗筋紹介より引用)

新潮社で昭和7年8月〜昭和20年12月まで発行していた総合月刊誌「日の出」より事件に関する記事を厳選し、編集された。

【目次】

第一部 男と女の「非情の現場」

 情痴の片腕事件  元警視庁刑事 谷山栄吉(昭和11年9月号)

 湯上りの死美人  元警視庁刑事 梅野幾松(昭和11年8月号)

 屋根裏の殺人鬼  元警視庁刑事 和田眞壽造(昭和11年8月号)

 都会の犯罪・裏の裏座談会  (昭和13年7月号)

第二部 猟奇、狂気の「倒錯愛」

 女装の殺人魔  元警視庁刑事 中村春造(昭和12年8月号)

 母殺し涙の裁判  佐山栄太郎昭和9年10月号)

 津田沼の生首事件  元警視庁刑事 伊藤健吾(昭和12年7月号)

 法医学二態

  自殺か他殺か  医学博士 山田修(昭和9年12月号)

  解剖室奇談  東京女子医専教授 堀泰二(昭和9年8月号)

第三部 驚愕と怪異の「人間模様」

  旋風殺人事件  岩崎栄(昭和10年3月号)

  樽漬の生美人  元警視庁刑事 高山竹太郎(昭和11年6月号)

  裁判官の思い出座談会  (昭和9年5月号)



“昭和モダンノンフィクション事件簿”と副題のついた一冊。当時の事件を語るということで、元刑事たちの執筆が多いのだが、読んでいるとそこら辺の週刊誌の記事より立派な文章なのである。それも臨場感にあふれ、そして鬼気迫る筆致なのだ。刑事だから報告書などを書いたりすることは慣れているのだろうが、そこら辺の下手な小説より文章がうまいというのは不思議だ。記者の人たちが、元刑事に聞いた話を脚色して書いたのだろうか。

戦前の話なので、捜査がやや(かなり?)強引じゃないのかなと思うところはあるが、それでも刑事の勘によって犯人を追いつめていくところは大したもの。さすがというべきか。

いつの時代でも、犯罪はなくならない。犯罪は時代を移す鏡の一つである。そんなことを教えてくれる一冊である。

それにしても「屋根裏の殺人鬼」なんて、乱歩の小説にでもありそうな話だ。