平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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千街晶之・市川尚吾・大川正人・戸田和光・葉山響・真中耕平・横井司『本格ミステリ・フラッシュバック』(東京創元社)

本格ミステリ・フラッシュバック (Key library)

本格ミステリ・フラッシュバック (Key library)

松本清張が頭角を現した1957年から、綾辻行人が登場する1987年まで。社会派推理小説が登場しブームとなった後、新本格が生まれるまで本格ミステリは冷遇されてきたと言われる。そんな時代の傑作・怪作を徹底的に紹介する瞠目のガイド。

東京創元社のミステリ専門誌「ミステリーズ!」に創刊から11回に渡った人気連載を大幅加筆。



いわゆる清張以後から綾辻以前まで。本格が不遇と今まで言われてきた30年間に生み出されてきた本格ミステリの傑作、怪作がこれでもかとばかりに紹介されている。

紹介されている作家は全部で140人。紹介されている作品は全部で……数えるのが大変でやめた。傑作と呼ばれ、今でも歴史に残っている傑作から、当時は読まれていても今では顧みられなくなった佳作、そして当時ですらほとんど注目されなかった怪作。読んだことがある人にとってはその頃の衝撃を思い出すであろうし、読んだことがない人にとっては是非とも手に取ってみたい、そう思わせる作品ばかりである。個人的には、量産作家とレッテルを貼られて敬遠されてきた傾向のある人たちの作品が多数紹介されているのが嬉しかった。

ガイドブックであるから紹介できる数は限られているし、編者の好みによって左右された作品もあるだろう。このガイドブックを読むと、なぜこの作品が紹介されてこの作品は紹介されなかったのか、なぜこの作家は一冊も紹介されていないのか、なんでこんな作品が高評価なのか、この作品のどこが本格ミステリなのか、などといろいろ言いたいことがある読者もいるだろう。それは当然のことであり、できれば次はそんな思いを抱いた読者が独自にガイドブックを編んで頂きたいものである。