平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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本岡類『「黒い箱」の館』(光文社 カッパ・ノベルス)

「黒い箱」の館 (カッパ・ノベルス)

「黒い箱」の館 (カッパ・ノベルス)

七百年の旧家は新築間もないホームエレベータ付きの巨大な館だった――。

熊野山中の旧家・里見家で長男の仁太郎が不審な縊死を遂げる。折しも里見家では相続をめぐり親族会議が行われようとしていた。疑いの目を向けあう親族たち……。

休暇中で里見家に逗留していた将棋棋士・水無瀬翔五段は、仁太郎は自殺だとする警察の結論に疑いを抱き、独自の捜査に乗り出す。事件は進展し、やがて第二の惨劇が起こる……!!

白い外壁も眩しい、巨大で現代的な里見邸を覆う黒い殺意。本格推理の旗手が満を持して放つ会心の書下ろしリアル・トリック・ミステリー!(粗筋紹介より引用)

1999年4月刊行、書き下ろし。



出版社を変えての、水無瀬翔五段シリーズ第三作。将棋に関係がなさそうな舞台だが、将棋棋士のほとんどが夏休み状態になる8月に、知り合いの盤師である品田重吉に誘われて逗留している。里見家は先祖代々山林地主の家で、品田は里見家の山で取れた榧の木から将棋盤を創るために招かれていたという設定である。

七百年続く熊野山中の旧家、母親の違う兄妹たち、相続争いなど、水無瀬でなくても横溝正史的な世界を想像するところだが、粗筋にあるとおり舞台は新築間もない館。水無瀬がぼやくように、味気ないこと夥しい。

事件の方は不審な自殺死体に密室殺人と、本格ミステリファンに興味をそそる展開。トリックはあまり褒められないが、犯人は結構意外かも。将棋盤と事件を絡めてほしかったところだが、さすがに難しかったか。

舞台のちぐはぐさは残念だが、それさえ我慢できる人にはそれなりに面白いと思う。

どうでもいいけれど、青山桜女流初段が出なかったのは残念。それにしても、いつの間に「浮気するんじゃないゾ」という声を想像できるまで関係が進んだんだ?