- 作者: ポール・リンゼイ,笹野洋子
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1993/08/03
- メディア: 文庫
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1992年発表、1993年翻訳。
例によって、今頃読むかな一冊。
自分の地位を守ることだけに力を使う官僚的上司とそのイエスマン部下、それに対抗するかのように自らの信念に基づき真実と犯人を追い求める刑事。警察小説ならよくある設定である。本作もそんな作品の一つだが、理解ある上司のおかげでチームを組んで捜査にあたるところが珍しいといえば珍しいか。ベトナム戦争の経験があるFBI特別捜査官マイク・デヴリンが主人公だが、作者も同様の経験を持っているところから、この主人公はほぼ作者の姿を投影したものであるのだろう。
本書がヒットした大きな理由の一つは、現職のFBI捜査官というところだろう。ピラミッドの組織と自らの地位を守るだけの上司の姿というのは、作者自身こそモデルはないと書いていても、結局はそういう上司がいるからこそ書けた内容である。とはいえ、いくら現職捜査官がこういう作品を書いても、FBIの組織が変わるということは絶対に有り得ない。そういう点で虚しさを感じるのは私だけだろうか。
現職ではあまり見られないと思われるスピーディーでドラマティックな展開は、ありきたりでも警察小説の王道を守っており、読者を飽きさせない。二作目を読もうという気にはならないが、とりあえず面白かったとだけは書いておこう。