平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

漂泊旦那の日記です。本の感想とサイト更新情報が中心です。偶に雑談など。

ふじつか雪『空(カラ)の少年』(白泉社 花とゆめコミックス)

空の少年 (花とゆめCOMICS)

空の少年 (花とゆめCOMICS)

学園では王子様、家では4歳の三つ子を育てる主夫、日下部薫の物語。「ひだまり台風(タイフーン)」。
男女4人の高校生が乗った、田舎の小島から本土へ向かうはずの船は、悪天候のため無人島に流された。「アカツキの楽園」。

肌が人に触れると、自分に関する記憶を抜き取ってしまう少年アオと、そんな秘密を知ってしまったクラスメイト茜は親しくなったのだが。「(カラ)の少年」。
アンドロイドの青年キオと、人間の少女吹雪の恋物語。「ピノッキオは夢を見る」。
『金魚奏』で話題をさらった作者の読み切り短編集。
恋物語でも結構感動系の作品を書いてくれるので、新刊が気になっていた作者だったのだが、今回は短編集。なかなかよい作品がそろっている。「ひだまり台風(タイフーン)」はいわゆる子育てものだが、この設定のままで長編を描いてもよかったんじゃないだろうか。「(カラ)の少年」は哀しい、だけど感動する話。記憶が無くなってしまうから、好きな人と手をつなぐこともできない、キスすることもできないと言うのは、かなり残酷な話。それを知っていながら主人公の側にいようとする少女の姿が美しいし、着地点も鮮やか。
うん、今度はこの人の長編を読んでみたいな。そうしたら、間違いなく人気作家になる、この人は。