- 作者: 法月綸太郎
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2008/01/22
- メディア: 新書
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売れっ子ライターが36歳の若さでマンションから転落死。事件の背景にあったのは、彼がかつて所属していた劇団の再演を揉める騒動にあるのか。「【牡牛座】六人の女王の問題」。
綸太郎がカンヅメにされた山中湖畔のリゾートホテルで、ルポライターもどきのプロの恐喝屋が殺された。彼が脅していたのは、ホテルのオーナーだったらしい。「【双子座】ゼウスの息子たち」。
殺された男性が探していたのは、妹を妊娠させ自殺まで追い込んだ、不倫相手の男。男性はすでに残り3人まで候補者を絞り込み、接触していたという。「【蟹座】ヒュドラ第十の首」。
人気女優が殺された。久能警部は交際していた新進脚本家を、物証も見つけたので重要参考人として連れていったまではよかった。しかし、脚本家のアリバイを証言したのは身内であるはずの警察だった。「【獅子座】鏡の中のライオン」。
飯田が綸太郎に見せたのは、最近ネットや携帯で広まっている、水中毒で植物状態になった女性に関する一文。しかし、飯田によると、ここに出てくる彼女は実在の人物であった。「【乙女座】冥府に囚われた娘」。
2004〜2007年,「ジャーロ」「ミステリーズ」「夕刊フジ」に掲載された「星座シリーズ」の短編を集めたもの。クイーン『犯罪カレンダー』を意識して構成された短編集。
法月久しぶりの新作は、どちらかといえば軽いタッチで書かれた短編集。本人曰く“プロフェッショナルな仕事”だが、下手に力を入れすぎる作品に比べると、こういうものの方が面白くなることは意外にある。
短編としての本格ミステリを楽しむには充分な作品集ではないだろうか。星座等に関するちょっとした蘊蓄があって、事件があって、手掛かりが提示され、推理によって犯人が見つけられるという、定式通りの構成と仕上がりである。謎の設定はそれなりにヴァラエティになるようにしているため、ワンパターン化は免れている。
まあ、これを推理クイズの短編小説化と揶揄する向きもあるだろうが、それを承知の上で推理の過程を楽しむのが、本格ミステリファンなのだと思う。
手軽に本格ミステリを楽しむのなら、まずまず良質な作品集。法月も長編で悩みまくるぐらいなら、こういう短編で肩の力を抜いた方が、いい結果が得られるんじゃないだろうか。
どうでもいいことだが、私としては図書館シリーズの沢田穂波が好みなので、そちらの方を頑張ってほしいと思うところだが。別に図書館にこだわらなくてもいいから、穂波を出せということだ。もっとも、法月ファンからしたら、穂波はニッキーレベルに痛い人物と見られているのだろうか。