- 作者: 東野圭吾
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2007/11/20
- メディア: 単行本
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なぜ、そんな重要なことを忘れてしまったのだろう。
事故の状況を調べる慎介だが、以前の自分が何を考えて行動していたのか、思い出せない。
しかも、関係者が徐々に怪しい動きを見せ始める……。(帯より引用)
「小説宝石」1998年2月号〜1999年1月号掲載。幻の長編、初単行本化。
「小説宝石」に連載されながら、なぜか10年近く単行本化されていなかった作品。飲酒運転による交通事故の問題など、発売された2007年の今にタイムリーな話かもしれない。もっとも、1999年には危険運転致死傷罪を創設するきっかけとなった飲酒運転事故があったのだから、時期を狙ったとは思えない。
交通事故の被害者の夫に襲われ、事故の記憶を失った雨村が事故の状況を調べていく内に、同棲していたホステスが失踪したり、働いているスナックに謎の女性が訪れたりと、不審な出来事が次々に起こる。
事件の謎を追っていく内に主人公がいろいろなことに巻き込まれながらも、いつしか真相にたどり着くというのはよくある話だが、主人公が完全ではなく一部の記憶を失った加害者というのは珍しいところ。作者にとっては書きやすい設定かもしれない。ある程度大事なところは覚えていて、肝心なところは忘れているなんて、物語を進める上では結構都合が良いだろう。
事件の謎そのものはそれほど珍しくないが、真相にホラーっぽい仕上がりを加味したところは作者の工夫か。最後は想像したくない仕上がりである。ただ、(微妙にネタバレ)ある女性が主人公と関係を持つ理由がさっぱりわからない。あれは余計なシーンだったと思う。
読み終わってみれば、いつもの東野圭吾というところだろう。それなりに出来が良く、それなりに面白く、それなりに後味が悪い。書き直しているわけでもないだろうし、なぜ単行本化しなかったのだろう。
最後に、帯の「今度の東野圭吾は悪いぞ。」は的外れ。これぐらいだったら、いくらでも書いているだろう。