- 作者: 高木彬光
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2005/06/14
- メディア: 文庫
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「宝石」1961年3月〜7月まで掲載。8月にカッパ・ノベルスより刊行。日本における誘拐ミステリの最大傑作の一つ。
他に「講談倶楽部」1960年12月に掲載された傍聴記「本山裁判」。「文藝春秋」1963年7月に掲載されたエッセイ「誘拐――二つの犯罪」。「幻影城」1975年9月増刊に掲載されたエッセイ「愚作を書け!」を収録。
懐かしくなって、高木作品を引き続き読む。『誘拐』を読んだのはもう30年近く前の話。祖父の本棚になぜかカッパ・ノベルス版があったのだ。実家にはまだあるはず。当時の思い出としては、身代金受け渡し付近のサスペンス、そして意外な犯人像、さらに最後のドンデン返し、と三拍子そろった傑作に大満足した記憶がある。
ということで久しぶりに読み返したのだが、いやあ、面白かった。さすがに古さは感じるものの、昔の印象と変わらない面白さを持っているというのは凄い。この誘拐の真相は今読んでも見事と言うしかないし、犯人を捕まえる一大作戦の奇抜さは素晴らしい。百谷が犯人を最後に嘲笑するところは、読者をアッと言わせるどんでん返しである。
今でも法律問題、被害者対策問題の一つとなっているある条文について、最後にさらっと触れているのは、高木彬光に先見の明があったということだろう。
『誘拐』は、今でも色褪せない誘拐ミステリの大傑作である。誘拐の規模やトリックなどはどんどん進化していったが、この作品の衝撃度にかなう作品はほとんどない。
日本における誘拐事件のスタートともいえる“雅樹ちゃん誘拐殺人事件”の傍聴記「本山裁判」も非常に興味深い。当時の裁判における、有名人の傍聴記というのはちょっと珍しいのではないだろうか。