- 作者: 折原一
- 出版社/メーカー: 祥伝社
- 発売日: 2007/11
- メディア: 単行本
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「ある事件」の後、逢うことを禁じられた恋人から早乙女樹里は連絡を受ける。行く先は、広大な山裾を埋め尽くす暗黒の森、樹海。何人の侵入も拒む異界の奥深く、隠棲した作家が自らの家族を惨殺したと伝えられる山荘だった! 忌まわしき森の中、女は目的地へ辿り着けるのか? そして山荘の一室、固く閉ざされた部屋で、女を待つものとは? 「黒い森 生存者」
“ミステリー・ツアー”の目的地で待っている―――樹里
「ある事件」の後、逢うことを禁じられた恋人から滝川留美男は連絡を受ける。行く先は、広大な山裾を埋め尽くす暗黒の森、樹海。何人の侵入も拒む異界の奥深く、隠棲した作家が自らの家族を惨殺したと伝えられる山荘だった! 忌まわしき森の中、男は目的地へ辿り着けるのか? そして山荘の一室、固く閉ざされた部屋で、男を待つものとは? 「黒い森 殺人者」(以上、粗筋紹介より引用)
表からも裏からも読める本。結末は中心で袋閉じになっている「解決編 206号室」に隠されている。
折原一の新作長編は、『倒錯の帰結』に続く表からも裏からも読める本。どっちが表紙かわからなくなるような装丁も一緒だが、どうせだったらバーコードや定価表示も一緒に付ければよいのに、などと思ってしまう。バーコードを2ヶ所に付けるのが違法だという(多分そうだと思う、調べていないけれど)のならば、片方は読み取り不可な飾りにしてしまえばいいわけだし(それも違法か?)。
隠棲した作家が自らの家族を惨殺した、というのは折原の過去の作品なのだろうか。読んでいない作品もあるのでよくわからない。まあ、本作品とは特に関係はないのだが。
肝心の中身の方だが、つまらなかったの一言で切り捨ててもいいと思う。
まずこの装丁自体が無意味。どちらから読んでも確かにいいのだろうが、作者がおすすめするように「生存者」側から読むのがベター。「殺人者」には、「生存者」では語られていなかった真相の一部が隠されている(あまりにも馬鹿馬鹿しい真相だが)。しかし、この設定を活かすのであれば、交互に章を変えて語っていった方がまだ効果的である。似たような話なので、二つ目の作品は、一つ目の作品との相違点を何とかして探そうとする読者以外にとっては、壊れたレコードの繰り返しに過ぎない、つまらないものである。もちろん中盤からは少しずつ話が違ってくるのだが、下手なゲームブックの分岐点程度の効果しか生まれていない。
そしてなんといっても、袋とじで語られる真相があまりにも安っぽい。この程度のことで騒ぎ立てる主人公たちがアホにしか見えてこない(まあ、実際にアホなんだろうが)。
作者には、ご苦労様としか言い様がない作品である。ここまで来ると、自分が決めつけたルールに縛られて、作家としての成長を自ら断ち切ったとしか思えない。