平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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山田風太郎『十三の階段』(出版芸術社 山田風太郎コレクション3)

かつて探偵小説界では、中・短篇ミステリをリレー方式で書き継ぐ<連作>の試みが盛んに行われた。ラストを決めずに書かれるため、推理小説としての完成度はそれほど高くない代わりに、<連作>は多彩な作家陣が持ち味を活かして腕をふるうお祭りのような楽しさにあふれているのだ。本書には山田風太郎が参加した<連作>を他作家の執筆分まで完全収録した。山田風太郎の手になる明智小五郎や神津恭介が楽しめる奇想横溢の逸品ぞろい!

さらに幻の少年向け連作『夜の皇太子』を特別収録した決定版!(帯より引用)

香山滋・島田一男・山田風太郎楠田匡介・岩田賛・高木彬光白薔薇殺人事件」。

江戸川乱歩角田喜久雄山田風太郎「悪霊物語」。

角田喜久雄山田風太郎・大河内常平「生きている影」。

山田風太郎・島田一男・岡田鯱彦高木彬光「十三の階段」。

島田一男・香住春吾・三橋一夫高木彬光・武田武彦・島久平山田風太郎「怪盗七面相」。

山田風太郎・武田武彦・香住春吾・山村正夫香山滋・大河内常平・高木彬光「夜の皇太子」。

以上、6編を収録。



ファンでも何でもないのだが、時々買っている山田風太郎。このコレクションも3冊ともすぐに買った。しかし、この本だけは読む気にならなかった。収録作品を見ればわかるとおり、すべてがリレー小説。解説で日下三蔵が「無論、ミステリを複数の作家で書き継ぐ場合、辻褄が合わなくなる可能性は飛躍的に増大するから、これは一種のお遊びとして考えられていたようだ。しかし、作者自身が次にどうなるかわからない状況で書く、という変則的な状況が、読者にとっても一種異様なサスペンスを生み出すこともあり、一概に読む価値なしと断ずることはできない。むしろ、ミステリ・ファンにとっては、他の書き手とのセッションの中で、その作家がどんな「芸」を見せてくれるか、という興味の方が大きいだろう」と書いたとしても、やはりリレー小説はお遊びの要素が強すぎ、作家の苦労ほどは面白いものに出会えない、というのが本当のところだろう。

ということで、リレー小説を読もうという気は全く起きなかったのだが、一応買っていたのだからととりあえず読んでみた。「悪霊物語」だけは春陽文庫の方で読んでいるので、再読。

面白かったのは「怪盗七面相」。これは設定だけがリレーになっており、各作家で事件の発端から解決までが書かれるから、どちらかといえば読み切り連作に分類される作品である。それぞれの作家がシリーズ探偵を登用しているから、ファンサービスとしても十分な出来になっている。

あとはそれぞれの作家が書いた神津恭介を楽しめる「十三の階段」が趣向として面白い程度か。

まあ、作品そのものを楽しむのではなく、各作家のお遊び精神を楽しむ作品集だろう。