平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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浦山翔『鉄条網を越えてきた女』(カドカワノベルズ)

鉄条網を越えてきた女 (カドカワノベルズ)

鉄条網を越えてきた女 (カドカワノベルズ)

昭和59年8月、ジャズのメッカ、ニューオリンズで、コルク・ヘレナというポーランドユダヤ人女性が病死。遺産のうち百万ドルが日本の財界の大御所、渋沢栄一の秘書役黒岩喜一にのこされた。又、遺言状には遺産の残りをアウシュビッツ博物館に寄贈する、とあった。黒岩は既に死亡。長男に調査依頼された新聞記者、清瀬徹準がヘレナの正体を追う。コルク・ヘレナとは一体、何ものか? 彼女の自宅に残された「メンゲレ殺人計画書」とは何か?

“戦争”が介在して、謎は意外な様相を呈していた!! 国際的スケールで描く、感動の大型ミステリー。(粗筋紹介より引用)

1987年、第7回横溝正史賞佳作受賞作。



新聞記者が国際的な謎を追うという、在りがちな展開の冒険小説。作者は現役の新聞記者ということで、読ませる実力はなかなかのもの。もっとも、小説というよりは、新聞記事みたいな展開と文章ではあるのだが。

謎そのものは面白いのだが、結局は海外のあちらこちらを追いかけるだけで、この手の冒険小説によくある妨害工作などがほとんど存在しない。この辺も、新聞記事そのものを読まされているようなという印象の大きな原因となっている。

題材としては面白いかな、という程度。佳作止まりなのも無理はないかな。