平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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宮部みゆき『龍は眠る』(双葉文庫 日本推理作家協会賞受賞作全集67)

雑誌記者の高坂が慎司と出会ったのは、暴風雨の夜だった。小学生が行方不明となった事件の、誰も知らない真相を告げた後、その少年は言う。僕は超能力者なんだ、と。半信半疑でその能力を調べる高坂に、奇妙な手紙が届いていた。何か恨みがあるらしい……そして事件が起こる。超能力者の悲哀とともに紡がれる異色サスペンス。(粗筋紹介より引用)。

1992年、第45回日本推理作家協会賞(長編部門)受賞作。



久々の再読。この全集が出なかったら、再読することはなかっただろう。そのせいかもしれないが、前半部分はほとんど忘れていた(単に自分が忘れっぽいだけ?)。

この後も傑作、話題作を次々産み出していく作者にとって、本作品はその華麗なるキャリアの初期に書かれた傑作である。そして面白さは、いつの時代に書かれた作品であろうと変わらない。高いレベルを維持する秘訣とは何なのだろうか。

超能力という異形の力を持つ少年たちの苦悩。そして異形の力を持ち合わせることによる周りからの偏見や異端視。そして周囲の人たちを巻き込んでしまう不幸な出来事。超能力ものではありきたりな展開なのだが、それでも最後まで面白く読ませてしまう力には脱帽してしまう。

ありきたりな材料を、ありきたりな舞台の上で、ありきたりな言葉を使いながら、一流の料理に仕上げてしまう。やはり宮部みゆきは凄い作家である。