平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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大石直紀『パレスチナから来た少女』(光文社文庫)

パレスチナから来た少女 (光文社文庫)

パレスチナから来た少女 (光文社文庫)

パレスチナ難民キャンプで家族を虐殺された沙也は、日本人に救われ日本で育った。一方、同じように肉親を殺され復讐に燃える女テロリストのマリカは、指令を受け、日本へ。折しも、日本で中東をめぐる重大な会議が開かれようとしていた。そして二人に、非情な謀略と運命が!

人は永遠に血を流し続けなければならないのか?(粗筋紹介より引用)

1998年、第2回日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作。さらに加筆の上、2001年に文庫化。



主人公である沙也とマリカ。そして沙也の養父であるジャーナリスト立花俊也。イスラエルパレスチナが争う中東問題。絶好の舞台だし、登場人物の配置そのものは悪くないのに、どうしてこう安っぽい国際サスペンスで終わってしまうんだろう? 新人賞受賞作だから仕方がないといえば仕方がないのかもしれないが、文章などは悪い意味で手慣れていて初々しさがないので、余計にそう思ってしまう。

枚数制限があったかどうかは知らないが、中東問題を書くならもっと背後関係についてページを割くべきだと思うし、登場人物の動きが軽すぎる。欠点ばかり見つかってしまうな、この作品。

それなりの小説を書く能力と、仰々しい舞台。様々な裏を持った登場人物を配置して事件を作ればできあがりました、そんなインスタントなイメージしか出てこない。本屋の棚を埋める程度の作品は書ける作家だな、という印象を最初に与えてしまってはダメだろうな。悪い意味で達者な作家なんだろう。。

どうでもいいけれど読んでいる途中、沙也=マリカの叙述トリックを使っていたら怒るだろうなあ、なんて考えてしまった。悪い意味で毒されているらしい。