平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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大沢在昌『パンドラ・アイランド』(徳間書店)

パンドラ・アイランド

パンドラ・アイランド

東京から七百キロ、小笠原の先にある一見平和でのどかな南の楽園・青國島。一人の男がこの島にやってきた。高州康彦、四十一歳、元刑事。彼の仕事は“保安官”。司法機関のないこの島での治安維持が任務だ。都会での生活に疲れ、妻とも離婚し、平穏な暮らしを求めてやってきた。そんな高州の願いは、一人の老人の死によって打ち破られた。泥酔して海に転落した草引の死に疑問を抱く高州。島特有のしきたり、排他的な島の人々…さまざまなものが捜査の行方を阻む。

老人の転落死、放火事件、そして射殺事件。高州の赴任以来、青國島の平和な暮らしは一変した。捜査を続けるうち、島でアメリカ統治時代にコカの栽培をしており、それが「財産」になっていることを知る高州。そんな彼に収入役の草引、助役の木島らは苦言を呈する。村長の井海、島の過去を知るアメリカ人医師オットー、高州に近づく娼婦チナミ…真実を知っているのは誰だ? 島の人間が守ろうとする“秘密”とは? 孤独な闘いのなか、しだいに明らかになる島の過去。事件の核心に迫る高州を待ち受けるものは。(「BOOKデータベース」より引用)

東京中日スポーツ」に2002年8月1日〜2003年11月14日に連載された「海と拳銃」を改題、大幅改稿。第17回柴田錬三郎賞受賞作。



ノベルスが出てからハードカバーを読む。まあ、いつものことだ。

柴田錬三郎賞を受賞したというからとても期待していたんだけどね……。ひとことで言ってしまえば、「生緩いハードボイルド」。確かに排他的な島のように見えるが、高洲が探す秘密や手掛かりは追っていくうちに簡単に見つかるし、別れた後でも付き合いのある警察幹部の元妻からは重要な情報が手に入る。殺人事件で捜査にやってきた捜査一課長は高洲の元上司。いい関係ではなかったといいながら、それほどぶつかり合うこともなく、互いに情報を交換している。何のことはない。回りに助けられながら、簡単に答を見つけているだけじゃないか。どこが「たった一人の追跡行」(帯の言葉)なんだ? どこが「孤独な闘い」なんだ? 

それでも読んでいる途中は退屈しなかったんだから、物語を読ませる力はさすがというべき。他に言い様がないね、この作品については。