平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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麻耶雄嵩『神様ゲーム』(講談社 ミステリーランド)

神様ゲーム (ミステリーランド)

神様ゲーム (ミステリーランド)

小学4年生の芳雄の住む神降市で、連続して残酷で意味ありげな猫殺害事件が発生。芳雄は同級生と結成した探偵団で犯人捜しをはじめることにした。そんな時、転校してきたばかりのクラスメイト鈴木君に、「ぼくは神様なんだ。猫殺しの犯人も知っているよ。」と明かされる。大嘘つき?それとも何かのゲーム?数日後、芳雄たちは探偵団の本部として使っていた古い屋敷で死体を発見する。猫殺し犯がついに殺人を?芳雄は「神様」に真実を教えてほしいと頼むのだが……。(粗筋紹介より引用)

かつて子どもだったあなたと少年少女のためにの―――ミステリーランド 第七回配本。



デビュー作『翼ある闇』は「安普請の黒死館」ぶりがとても面白かったのだが、その後の作品は自分と肌が合わないものが多い。本作は古本屋の子供コーナーにあったので、手に取ってみることにした。しかし、こんな作品、ミステリーランドで出していいのかい、と思わず叫びたくなった。子供が読んだら、トラウマになるだろうな、これ。それぐらい、底意地の悪い作品。検索したら、後援会で編集者からトラウマになるような作品をリクエストされたと書いているけれど、多分こういうものが作者の趣味に合っているんじゃないかと思ってしまう。

探偵団という昔の子供なら一度は結成しそう(今はあるかどうか知らない)なアイテムを持ち出し、本部は山の中にある廃屋。いかにも小学生の探偵団が追いそうな事件を追いかけるうちに、事件に遭遇。これだけだったら、ミステリーランドらしい作品になっただろうに、「神様」を同級生に配置したことで、物語は複雑なものになってしまう。一応ミステリらしい謎とトリック、解決があるものの、「神様」の存在は全てをひっくり返してしまう。

麻耶雄嵩は結局、一応の謎と解決を提出しながら、最後はそれを全てぶち壊し、高いところから笑うのが好きに違いない。それはストレートな本格ミステリの形を嫌ってのことなのか。自ら創造したものは、自らの手で壊さないと気が済まないのだろう。今回はミステリーランドという叢書があって、主人公が小学生だからこの仕掛けは成功したのだろうが、いつまでもこのパターンが成功するとは限らない。この人の、ストレートな長編本格ミステリを読んでみたいものだ。