平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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藤子不二雄A『愛…しりそめし頃に…』第8巻(小学館 ビックコミックススペシャル)

藤子不二雄Aの青春時代=トキワ荘時代を描いた自伝的私小説漫画、第8巻。今回はトキワ荘の兄貴役だったテラさんこと寺田ヒロオが結婚し、トキワ荘を出ていく。そして漫賀道雄は人気雑誌「少年」に『シルバークロス』の連載を始める。
実際に自らの過去の作品を入れるなど、自伝的な描き方になっているが、『シルバークロス』が「少年」への初連載作品という形になっているなど、創作の部分は結構多い。それでも当時の漫画界がどうなっているか、そして巨匠となった漫画家たちの青春、そして当時の漫画家の素顔を見ることができる作品である。そして一つのものに打ち込む青春漫画としても、高い評価を得られる作品でもある。
キャバレーの女の子に憧れてしまう漫賀が、女の子の兄貴分に諫められる姿など、若者ならありそうなエピソードなんかには、あるあると思わずうなずいてしまう。編集者が漫画家と新たな児童漫画の世界を築き上げようと、二人三脚で頑張る姿などは、すでに成熟した漫画というマーケットの基礎だったんだと感動する。そのような一つ一つの何気ないエピソードが、この作品を支えているのである。