- 作者: 大薮春彦
- 出版社/メーカー: 徳間書店
- 発売日: 1985/07
- メディア: 文庫
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1981年10月、徳間書店より刊行。1700枚の大作、第2巻。
所々でハンティングシーンや暴力のはけ口を見出すことができるものの、ここでも石川はプロパーとして腰を低くしたまま、虎視眈々とチャンスを狙っている。腐敗しきった医療・薬品業界への怒りを隠したまま。その姿は、トロフィーブックの上位に載る獲物をただひたすら待ち続けるハンターの姿と同じである。石川はじっと待ち続けている。ここまで我慢する主人公も、大藪作品にしては珍しい。買収シーンばかりが続くが、そこへ持っていくシーンは色々とパターンが異なるため、読んでいて飽きることはない。
珍しいのは、裏の顔を知らない親友が登場するところだろうか。ハンティング仲間である大学医学部病理科に所属する江崎邦夫副手との触れあいは、短いページながらも強烈なイメージを残す。解剖によって臨床医の誤りを指摘する、医療水準の向上に役立つはずの病理医の存在がどこでも煙たがれるという事実に憤慨し、江崎のことを励ます石川の姿は、ちょっとジンと来るものがある。
怒りに震える野獣は、未だ牙を隠したままである。