- 作者: 我孫子武丸
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2005/04
- メディア: 単行本
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刑事である蛯原篤史の妻がラブホテルで殺害された。しかも蛯原には汚職の疑いまでかけられ、自宅謹慎を命じられる。蛯原は、自宅にあった弥勒像の置物から、新興宗教団体<救いの御手>に目を付ける。
同じ新興宗教団体に目を付けた辻と蛯原。二人は団体支部の前で遭遇することになる。
『殺戮にいたる病』から13年ぶりの書き下ろし長編である。そんなこと、わざわざ帯に謳う必要があるのかな。その間も長編や短編集を発表していたわけだから、作品を全く発表しなかったわけということではないし。まあ、書き下ろしが久しぶりということでこう書いたんだろうけれど、これって、雑誌連載作品を低く見る行為じゃないのか? まあ、作品評価とは全く別の部分でぐだぐだ書いているだけなんだが。
「教師」と「刑事」という章が交互に続くから、まあ何らかの仕掛けがしているんだろうと思って読んでいたが、それでもだまされてしまった。とはいっても、読み終わればただのワンアイディアものでしかない。仕掛けを成立させる構成力はうまいと思うし、新興宗教団体の書き方は面白いけれど、それだけかな。シンプル・イズ・ベストというのが私の方針なのだが、あまりシンプルすぎてもね。ただ、結末は疑問だな。ああいう風に残すメリットが全くないと思う(この書き方なら、ネタばれじゃないでしょう)。
まあ、ぶっちゃけて言ってしまうと、この程度の作品に1800円も払わされたのかよ、というのが本音。はっきり言えば、うまいけれど小粒。これが文庫だったら、拍手していたかもしれない。本の体裁なんて、作品そのものの評価には何の関係もないのだが。
どうでもいいけれど、この作品を何人が「本格ミステリ」として評価するのかな。私の考えからいったら、どこにも「論理的(にみえる)推理」がない作品なので、本作品は本格ミステリではない。