
- 作者: 奥泉光
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 1999/04/15
- メディア: 文庫
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1991年1月〜3月号「すばる」掲載。1991年10月、集英社より刊行された著者初の長編小説。
素人探偵たちによる推理合戦、横溝正史や中井英夫などのパロディを奥泉流に租借した謎と舞台(解説本を読むと大江健三郎、半村良、五木寛之などのパロディやオマージュもあるらしいが私にはわからない)、コミューン活動家の発言を通した文明批判、主人公の青春物語と軌跡探しなど、様々な要素を含みながら自分の世界に全てを取り込んでしまうその腕はすごいと思うのだが……。
はっきり言います。2,3年ぐらい前(もっと前かも?)から、メタフィクション、メタミステリーにはまともな評価ができません。個々の物語は面白いのに、それをわざわざ入れ子構造にするメリットというものが、私には思いつかないのです。私には、読者を混乱させるだけとしか思えません。小説世界そのものが虚の世界なのに、虚の世界の中にさらに虚の世界を組み込み、さらに虚の世界を組み込んで……といったような無限連鎖から何が生み出されるのでしょうか。一部作者や評論家は、その様な構造から生み出される混乱を“驚き”と評し、それを本格ミステリの“驚愕の結末”と同一視しているようにしか見えない(具体例を出せといわないように。今更古い本をひっくり返す元気はない)のですが、私には別物としか思えません。
上記感想は、あくまで私一人の考えだし、日頃思っていることをとりあえず言葉にしてみただけである。批判があるのなら受け付けるが、読む力が足りないだけという批判は受け付けない。ここでいう「力が足りない」とは、単なる排除の論理でしかないからである。自分がわかるものを別の人がわからないのは、“そいつが馬鹿だからだ”と自分を一つ上のランクに置こうとしている優越感でしかなく、実際は他人に納得のいく説明が全くできないことをすり替えているに過ぎないからである。