平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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貫井徳郎『追憶のかけら』(実業之日本社)

追憶のかけら

追憶のかけら

年末に読み終えていたのだが、気になるところがあったので時間を空けて結末を読み返してみた。なるほど、疑問に思ったところはクリアされているんだな。ただ、動機がちょっと中途半端な気がする。やるならもっと徹底してもいいところだろうに。
嫌な読み方をしてしまったので楽しめなかった。作家の手記が途中で挟まれているが、どうせどこかに仕掛けがあるんだろうと、間違い探しの目で読んでしまった。これでは物語に集中することができない。作者に申し訳ないことをしてしまった。
きちんと計算された、ヒューマンドラマの仕上がり。美しい夫婦愛・家族愛を描いた作品だろう。惜しい点は、主人公が魅力的な人物に全く見えないところか。いくら一人称とはいえ、もう少しよい書き方があったのではないだろうか。
ただ、これをミステリとして読むと弱いだろうね。普通小説に近い仕上がりのせいで、年末のミステリランキングでは予想以上に低い位置に留まったのだと思う。