平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

漂泊旦那の日記です。本の感想とサイト更新情報が中心です。偶に雑談など。

感想

孫沁文『厳冬之棺』(ハヤカワ・ミステリ文庫)

厳冬之棺 (ハヤカワ・ミステリ文庫) 作者:孫沁文 早川書房 Amazon 湖のほとりに建つ陸(ルー)家の半地下の貯蔵室で、当主陸仁(ルー・レン)の遺体が発見された。この地下小屋は大雨により数日間水没していたにもかかわらず、その床は乾いており、誰かが外から…

今村昌弘『でぃすぺる』(文藝春秋)

でぃすぺる (文春e-book) 作者:今村 昌弘 文藝春秋 Amazon 夏休みが終わった二学期の始業式。小学六年生の木島悠介は、月1回の壁新聞に大好きなオカルト記事を書く目的で「掲示係」に男子でただ一人立候補し、すんなり選ばれた。すると一学期の委員長である…

アンソニー・ホロヴィッツ『ナイフをひねれば』(創元推理文庫)

ナイフをひねれば ホーソーン&ホロヴィッツ・シリーズ (創元推理文庫) 作者:アンソニー・ホロヴィッツ 東京創元社 Amazon 「われわれの契約は、これで終わりだ」 彼が主人公のミステリを書くことに耐えかねて、わたし、作家のアンソニー・ホロヴィッツは探…

佐藤満春『スターにはなれませんでしたが』(KADOKAWA)

スターにはなれませんでしたが 作者:佐藤 満春 KADOKAWA Amazon レギュラー番組19本を数える人気放送作家、トイレ・掃除の専門家、ラジオパーソナリティ、お笑い芸人……様々な顔を持ち合わせオードリーなど多くの人気芸人が信頼を寄せる男サトミツこと「佐藤…

深水黎一郎『倒叙の四季 破られたトリック』(講談社ノベルス)

倒叙の四季 破られたトリック (講談社ノベルス) 作者:深水 黎一郎 講談社 Amazon 懲戒免職処分になった元警視庁の敏腕刑事が作成した〈完全犯罪完全指南〉という裏ファイルを入手し、完全犯罪を目論む4人の殺人者。「春は縊殺」「夏は溺殺」「秋は刺殺」「冬…

三上幸四郎『蒼天の鳥』(講談社)

蒼天の鳥 作者:三上幸四郎 講談社 Amazon 大正13年。鳥取県鳥取市。女性の地位向上を目指し「新しい女」の潮流を訴える「女流作家」田中古代子は、娘の千鳥と内縁の夫の3人で、友人のいる尾崎翠もいる東京に引っ越しをする予定を立てていた。移住直前、のあ…

ボストン・テラン『音もなく少女は』(文春文庫)

音もなく少女は (文春文庫) 作者:ボストン・テラン 文藝春秋 Amazon 貧困家庭に生まれた耳の聴こえない娘イヴ。暴君のような父親のもとでの生活から彼女を救ったのは孤高の女フラン。だが運命は非情で……。いや、本書の美点はあらすじでは伝わらない。ここに…

東野圭吾『あなたが誰かを殺した』(講談社)

あなたが誰かを殺した 作者:東野 圭吾 講談社 Amazon 8月の別荘地。様々な家族が夏を過ごすためにやってくる。総合病院を経営する夫妻と我儘な一人娘、その婚約者。大企業の会長とやり手の妻とその部下家族。経営者の妻と公認会計士の夫のパワーカップルと、…

宮部みゆき『希望荘』(文春文庫)

希望荘 (文春文庫) 作者:みゆき, 宮部 文藝春秋 Amazon 今多コンツェルン会長の娘と離婚した杉村三郎は仕事を失い、愛娘とも別れ、東京都北区に私立探偵事務所を開設する。ある日、亡き父が生前に残した「昔、人を殺した」という告白の真偽についての依頼が…

米澤穂信『Iの悲劇』(文藝春秋)

Iの悲劇 作者:穂信, 米澤 文藝春秋 Amazon 一度死んだ村に、人を呼び戻す。それが「甦り課」の使命だ。山あいの小さな集落、簑石(みのいし)。六年前に滅びたこの場所に人を呼び戻すため、Iターン支援プロジェクトが実施されることになった。業務にあたるのは…

手塚治虫『ミッドナイト ロストエピソード』(立東舎)

ミッドナイト ロストエピソード (立東舎) 作者:手塚 治虫 立東舎 Amazon 『ミッドナイト』は、もぐりの深夜タクシー運転手ミッドナイトが、乗客にまつわるドラマにかかわっていく、一話完結形式の連載作品。『週刊少年チャンピョン』に連載された。少年週刊…

阿津川辰海『午後のチャイムが鳴るまでは』(実業之日本社)

午後のチャイムが鳴るまでは 作者:阿津川 辰海 実業之日本社 Amazon 他人から見れば馬鹿らしいことに青春を捧げる高校生たちの群像劇と、超絶技巧のトリックが見事に融合。稀代の若き俊英が“学校の昼休み”という小宇宙を圧倒的な熱量で描いた、愛すべき傑作…

道尾秀介『鬼の跫音』(角川文庫)

鬼の跫音 (角川文庫) 作者:道尾 秀介 KADOKAWA Amazon 刑務所で作られた椅子に奇妙な文章が彫られていた。家族を惨殺した猟奇殺人犯が残した不可解な単語は哀しい事件の真相を示しており……(「■(ケモノ)」)。同級生のひどい攻撃に怯えて毎日を送る僕は、ある…

ダン・ブラウン『デセプション・ポイント』上下(角川文庫)

デセプション・ポイント(上) (角川文庫) 作者:ダン・ブラウン,越前 敏弥 KADOKAWA Amazon デセプション・ポイント(下) (角川文庫) 作者:ダン ブラウン KADOKAWA Amazon 国家偵察局員レイチェルの仕事は、大統領へ提出する機密情報の分析。現在、ホワイトハ…

Gスピリッツ編集部『国際プロレス外伝』(辰巳出版)

国際プロレス外伝 辰巳出版 Amazon 『実録・国際プロレス』、『東京12チャンネル時代の国際プロレス』に続く、国際プロレス盛衰録第三弾。『Gスピリッツ』に掲載された国際プロレス関連の記事を加筆・修正、再構成。 マティ鈴木、マイティ井上、大剛鉄之助(…

荒木あかね『ちぎれた鎖と光の切れ端』(講談社)

ちぎれた鎖と光の切れ端 作者:荒木あかね 講談社 Amazon 2020年8月4日。島原湾に浮かぶ孤島、徒島(あだじま)にある海上コテージに集まった8人の男女。その一人、樋藤(ひとう)清嗣(きよつぐ)は自分以外の客を全員殺すつもりでいた。先輩の無念を晴らすため――…

森川智喜『動くはずのない死体 森川智喜短編集』(光文社)

動くはずのない死体~森川智喜短編集~ 作者:森川 智喜 光文社 Amazon 「なんでここにいるの?もしかして動いた?死んでるのに?」 どこまでもロジカル、限りなくポップ。そしてほんのりクレイジー。本格ミステリ大賞受賞作家の奇想が踊る、5つの奇妙な謎と…

阿部和重、伊坂幸太郎『キャプテンサンダーボルト』(文藝春秋)

キャプテンサンダーボルト 作者:和重, 阿部,幸太郎, 伊坂 文藝春秋 Amazon 人生に大逆転はあるのか? 小学生のとき、同じ野球チームだった二人の男。二十代後半で再会し、一攫千金のチャンスにめぐり合った彼らは、それぞれの人生を賭けて、世界を揺るがす危…

市川憂人『ヴァンプドッグは叫ばない』(東京創元社)

ヴァンプドッグは叫ばない 〈マリア&漣〉シリーズ 作者:市川 憂人 東京創元社 Amazon U国MD州で現金輸送車襲撃事件が発生。襲撃犯一味のワゴン車が乗り捨てられていたのは、遠く離れたA州だった。応援要請を受け、マリアと漣は州都フェニックス市へ向かう。…

阿津川辰海『読書日記~かくしてミステリー作家は語る〈新鋭奮闘編〉』(光文社)

阿津川辰海 読書日記~かくしてミステリー作家は語る〈新鋭奮闘編〉~ 作者:阿津川 辰海 光文社 Amazon 大好物のミステリーを食べて、こんなに大きくなりました――アガサ・クリスティー、綾辻行人、エイドリアン・マッキンティ、伊坂幸太郎、ジェフリー・ディ…

方丈貴恵『アミュレット・ホテル』(光文社)

アミュレット・ホテル 作者:方丈 貴恵 光文社 Amazon 犯罪者の楽園、アミュレット・ホテル別館。殺し屋、詐欺師、窃盗グループ、どんな犯罪者でも会員となれば泊ることが可能。2つのルールさえ守れば、どんなサービスでも提供。偽造パスポートでも、グレネー…

吉野泉『放課後スプリング・トレイン』(創元推理文庫)

放課後スプリング・トレイン (創元推理文庫) 作者:吉野 泉 東京創元社 Amazon 四月のある日、福岡市内の高校に通う私は、親友・朝名の年上の彼氏を紹介される。そのとき同席していた大学院生の飛木さんは、私の周りで起こる事件をさらりと解き明かしてみせる…

柳川一『三人書房』(東京創元社 ミステリ・フロンティア)

三人書房 (ミステリ・フロンティア) 作者:柳川 一 東京創元社 Amazon 大正八年東京・本郷区駒込団子坂、平井太郎は弟二人とともに《三人書房》という古書店を開く。二年に満たない、わずかな期間で閉業を余儀なくされたが、店には松井須磨子の遺書らしい手紙…

佐々木譲『暴雪圏』(新潮文庫)

暴雪圏 (新潮文庫) 作者:譲, 佐々木 新潮社 Amazon 三月末、北海道東部を強烈な吹雪が襲った。不倫関係の清算を願う主婦。組長の妻をはずみで殺してしまった強盗犯たち。義父を憎み、家出した女子高生。事務所から大金を持ち逃げした会社員。人びとの運命は…

夕木春央『十戒』(講談社)

十戒 作者:夕木春央 講談社 Amazon 浪人中の里英は、父と共に、伯父が所有していた枝内島を訪れた。島内にリゾート施設を開業するため集まった9人の関係者たち。島の視察を終えた翌朝、不動産会社の社員が殺され、そして、十の戒律が書かれた紙片が落ちてい…

米澤穂信『折れた竜骨』(東京創元社 ミステリ・フロンティア)

折れた竜骨 (ミステリ・フロンティア) 作者:米澤 穂信 東京創元社 Amazon ロンドンから出帆し、波高き北海を三日も進んだあたりに浮かぶソロン諸島。その領主を父に持つアミーナはある日、放浪の旅を続ける騎士ファルク・フィッツジョンと、その従士の少年ニ…

ホリー・ジャクソン『卒業生には向かない真実』(創元推理文庫)

卒業生には向かない真実 自由研究には向かない殺人 (創元推理文庫) 作者:ホリー・ジャクソン 東京創元社 Amazon 大学入学直前のピップに、ストーカーの仕業と思われる不審な出来事がいくつも起きていた。無言電話や匿名のメールが届き、首を切られたハトが家…

フェルディナント・フォン・シーラッハ『コリーニ事件』(創元推理文庫)

コリーニ事件 (創元推理文庫) 作者:フェルディナント・フォン・シーラッハ 東京創元社 Amazon 67歳のイタリア人、コリーニが殺人容疑で逮捕された。被害者は大金持ちの実業家で、事務所を開いたばかりの新米弁護士ライネンは国選弁護人を買ってでる。だが、…

井上悠宇『不実在探偵の推理』(講談社)

不実在探偵の推理 作者:井上悠宇 講談社 Amazon 「彼女は実在してる。存在が不確かなだけで、ずっと僕の傍にいるんだ」 大学生の菊理(くくり)現(うつつ)が思い出のダイスに触れた途端、長い黒髪に白いワンピースの美しい女性が見えるようになった。現にしか…

米澤穂信『可燃物』(文藝春秋)

可燃物 (文春e-book) 作者:米澤 穂信 文藝春秋 Amazon 群馬県警利根警察署に、4人が遭難したと通報があった。現場となったスキー場に捜査員が赴くと、崖の下に転落した水野正と後東陵汰が発見された。水野は救急搬送されたが、後東は頸動脈を刺されて失血死…