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「無期懲役判決リスト 2023年度」に1件追加。
フレデリック・フォーサイス『騙し屋』(角川文庫)
騙し屋とよばれるサム・マクレディは、イギリス秘密情報機関SISのベテラン・エージェント。切れ者で世界各地で敵を欺き、多くの成果をあげてきた。しかし、冷戦は終結し、共産主義は崩壊した。世界情勢は急転したのだ。それは、スパイたちに過酷な運命を強いることになった。マクレディは引退を勧告された。SISの人員整理構想のスケープゴートにされたのだ。マクレディは現役に留まるため、聴聞会の開催を要請した……。世界のフォーサイスが贈る、スパイたちへの鎮魂歌。“最後のスパイ小説”四部作第一弾。(粗筋紹介より引用)
1991年、イギリスで発表。1991年9月、角川書店より邦訳単行本刊行。1992年12月、文庫化。
イギリス秘密情報機関SISのベテラン・エージェント、騙し屋ことサム・マクレディ四部作の第一作。冷戦終了に伴う人員整理による左遷を不服としたマクレディが要請した聴聞会で、マクレディの過去6年間の業績を振り返る形式で語られる。第一作は1985年、ソ連軍の少将でマクレディの元情報提供者でもあるイェフゲーニィ・パンクラティンに係わる諜報戦である。バンクラティンは入手した軍の配置図を東ドイツでの視察時に直接手渡したいと連絡してきたため、パンクラティンの仕事を引き継いでいたCIAは旧知のマクレディにその仕事を押し付ける。しかし東ドイツに入ることができないマクレディは、定年間近でお払い箱寸前の部下、“ポルターガイスト”ことブルーノ・モレンツに命令する。一方モレンツは、プライベートで問題を抱えていた。
ページ数で約250ページ。長編ではあるが、短めである。四部作ということで同じような厚さの本が四冊。一冊にまとめてもいいじゃないか、なんて思ってしまうけれど、マクレディの切れ味の良さを表現するには、この形式の方がよかったと判断したのだろう。
老東西冷戦の終結に伴うお払い箱のスパイたちへの鎮魂歌ともいえるシリーズだが、本作品は引退間近のスパイの鎮魂歌と言える。ブルーノ・モレンツという人物は、マクレディの仕事をすでにしていないし、定年まで残り三年。コールガールのレナーテ・ハイメンドルフに首ったけで、定年後は一緒に住もうと話をしているという、ダメダメ人間である。それでもマクレディのために最後と言える仕事を引き受け、ヨレヨレながらも最後の輝きを見せる。
マクレディは、どんな部下にでも思いやりを持って接している。だからこそ彼はいまだにモテるのだろうし、彼のために仕事をしようと思うのだろう。そんなマクレディの魅力を伝える一冊であり、四部作の最初としては文句なしと言える一冊である。
芦辺拓『スチームオペラ 蒸気都市探偵譚』(創元推理文庫)
毎朝配達される
『ミステリーズ!』連載。2012年9月、東京創元社より単行本刊行。2016年4月、文庫化。
えっと、まずはスチームパンクというジャンルがSFにあるとは知らなかったこともあるけれど、この世界観についていくことができなかった。特に最初の方は物の名前にカタカナのフリガナがあふれかえって、非常に読みにくい。表紙を見ても、これは何のラノベなんだ、と思いながら読んでいたからかもしれないが。
最大の謎はユージンの正体なのに、周囲の誰もがなかなかその謎に突き進もうとしないから、イライラしまくり。世界観の把握が難しいのに、こんな舞台で本格ミステリをやられてもと思うと、なにも楽しめない。最後の仕掛けなんか、どうでもいいやという感じになってしまった。しかもありがちなネタだし。
作者には申し訳ないが、発想倒れとしか思えない。もしくは、読解力の無い私が悪いかもしれない。いや、絶対そうだ。
『お笑いスター誕生!!』の世界を漂う
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ミスター梅介の金賞合格時のネタです。
「推理クイズ」の世界を漂う
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久住四季『星読島に星は流れた』(東京創元社 ミステリ・フロンティア)
天文学者サラ・ディライト・ローウェル博士は、自分の住む孤島で毎年、天体観測の集いを開いていた。ネット上の天文フォーラムで参加者を募り、招待される客は毎年、ほぼ異なる顔ぶれになるという。それほど天文には興味はないものの、家庭訪問医の加藤盤も参加の申し込みをしたところ、凄まじい倍率をくぐり抜け招待客のひとりとなる。この天体観測の集いへの応募が毎回凄まじい倍率になるのには、ある理由があった。孤島に上陸した招待客たちのあいだに静かな緊張が走るなか、滞在三日目、ひとりが死体となって海に浮かぶ。犯人は、この六人のなかにいる――。奇蹟の島で起きた殺人事件を、俊英が満を持して描く快作長編推理!(粗筋紹介より引用)
2015年3月、書下ろし刊行。
『トリックスターズ』シリーズで本格ミステリファンの一部から注目を浴びていた作者による長編推理。なんとなく読みそびれていたが、正月休みで引っ張り出してきた。
『トリックスターズ』に比べると、非常にスタンダードで読みやすい本格ミステリ。なぜ孤島に集まるかという設定が面白い。これは全く知らなかった。殺人事件が起きる展開は定跡通りのもので、どことなく基本に忠実、という感じがする。東京創元社に書くから、あえてそうしたという気がしなくもない。
探偵役の加藤盤のどこがいいのだかはわからないが、お決まりのロマンスがあるところはやや軽さを感じる。35歳のオッサンという設定にしなくてもよかったと思うのだが。
ただあまり波乱もなく、呆気なく最後まで進んでしまったのはいいのか、悪いのか。後味爽やか、で終わってしまうのはちょっと勿体なかった。