平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

漂泊旦那の日記です。本の感想とサイト更新情報が中心です。偶に雑談など。

犯罪の世界を漂う

http://hyouhakudanna.bufsiz.jp/climb.html
「ノンフィクションで見る戦後犯罪史」に事件概要を追加。年4回は更新したいなあ……。
「求刑無期懲役、判決有期懲役 2017年度」「求刑無期懲役、判決有期懲役 2018年度」を2021年1月のどこかで予告なく削除します。
 尾田信夫死刑囚、さすがにもう無期懲役減刑してもいいじゃないか、なんて思う自分がいたりします。死刑確定から50年って、やはり異常事態。

松本清張『日光中宮祠事件』(角川文庫)

 1946年5月4日、日光市中宮祠で旅館が全焼し、中から一家六人の死体が発見された。死体に切り傷などがあったことから、日光警察署では主人が家族全員を殺害の上、自宅に火をつけたのち、包丁で喉を突き刺して自殺したとして捜査を終了させた。1955年夏、埼玉県の強盗傷害事件で逮捕された男が、過去の強姦事件や強盗殺人事件を「自供」。その記事を見た日光市の住職が、男が姉弟を殺害して放火したと自供した事件の手口が旅館全焼事件の手口とそっくりなので調べてほしいと訴えた。「日光中宮祠事件」。これは実話だが、一部アレンジされている。これが清張の初めてのノンフィクション・ノベルになるのかな。まだ書き込みが甘いと感じた。
 松本清張はかつて、阿蘇山茶店を開き、自殺者を多数救っている老人から、以前飛び込み自殺を救ったカップルの女性が、別の男性とともに阿蘇山に来たのを見てびっくりした話を小説にして書いたら、その女性から清張のもとに手紙が届いた。「情死傍観」。女性って怖いなと思わせる短編だが、こういう発想は逆に男性のもののような気がする。女性って、実はけっこうさばさばしているんじゃないかな。
 1543年に日本に鉄砲が伝来してから三十数年、稲富伊賀直家という鉄砲の名人がいた。直家は丹後の一色氏の家臣だったが、後に細川藤孝、忠興に仕え、厚遇される。「特技」。実在の人物で稲富流砲術の開祖である稲富祐直の話。特技を持つが故の真実に気付く様が恐ろしい。後に『火の縄』のタイトルで長編化されている。
 徳川家康豊臣秀吉から関八州を与えられて江戸に居を構えて3年。人を多く持ち、金銀も多く持つ工夫はないかと嘆く家康の前に、大蔵藤十郎が訪ねてくる。後の大久保長安であった。「山師」。長安と家康の葛藤を描いた作品。家康なら実際に考えていそうな内容である。
 翻訳家の男は一緒に住む妻の母親に嫌悪感を抱き、とうとう殺害を企てる。「部分」。小品ではあるが、好き嫌いに関する人の感情の取り上げ方が巧い。
 九州の山中にある佐平窟という洞穴には、ある伝承がある。秀吉の朝鮮役で藩主とともに朝鮮に渡った針尾佐平という男が戦場で俘囚になり、妻子が磔にされたという話と、佐平が朝鮮の間諜をしていたことが発覚し磔にされたという話である。どちらも洞穴の中に佐平が隠れ、妻子が食事を運んでいたことは一致している。作者は兵隊時代を思い起こしながら調査する。「厭戦」。英雄として見知らぬ地で死ぬか、それとも家族とともに死ぬか。難しい問題である。
 長女の婿養子は、女遊びが大好きなくずだった。このままでは財産も奪われてしまう。耐えきれなくなった私は、婿の殺害計画を立てる。完全犯罪は成功するかに見えたが。「小さな旅館」。意外なところから犯行がばれる話。警察も馬鹿じゃないぞって言いたいんだろうな。
 雑貨問屋を営む栄造は、年老いた父がお気に入りだった女中を追いかけることに頭を悩ませていた。「老春」。年をとっても人は恋をするのだろうか。年をとっても男は女を求めるものなのだろうか。私にはわからないが、ありそうな話である。
 中堅電機メーカーに勤める浜島正作は仕事ができず隅に追いやられていた。そんな正作が労組の代議員になると、会社へのベースアップを求め強硬な態度を取り続けた。「鴉」。冒頭の新聞記事が、物語にどう結びつくのか。そんな楽しみを持たせてくれる作品。最後のキーワードをタイトルにしなくてもいいと思うのだが。
 1974年4月、角川文庫より刊行。

 

 推理小説歴史小説、現代小説など幅広いジャンルの作品が集められた短編集。他社から出版された短編集に収録された作品ばかりであり、角川書店オリジナルの編集と思われる。1950年代から1960年ごろの作品であり、清張が作家としてデビューしてから数多くの作品を出版していた時期に書かれたものである。
 松本清張は多彩だなと思わせる作品集であるが、そんなことは今更言うまでもない。代表作と呼ばれるほどの作品はないが、どれも一定の水準は満たしており、少なくとも読んでいるときに退屈することはない。

犯罪の世界を漂う

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「死刑や犯罪についての雑記」に雑記を1本追加。

 長期収監についての話です。死刑囚関連にも色々デッドラインがあると思うのですが、収監20年以上は執行しないんじゃないかというのが今までのデータから得られた感触です。まあ、単なる偶然でしょうが。

キャロル・オコンネル『クリスマスに少女は還る』(創元推理文庫)

クリスマスに少女は還る (創元推理文庫)
 

 クリスマスも近いある日、二人の少女が町から姿を消した。州副知事の娘と、その親友でホラーマニアの問題児だ。誘拐か? 刑事ルージュにとって、これは悪夢の再開だった。十五年前のこの季節に誘拐され殺されたもう一人の少女――双子の妹。さが、あの時の犯人はいまも刑務所の中だ。まさか……。そんなとき、顔に傷痕のある女が彼の前に現れて言う。「わたしはあなたの過去を知っている」。一方、何者かに監禁された少女たちは、奇妙な地下室に潜み、力を合わせて脱出のチャンスをうかがっていた……。一読するや衝撃と感動が走り、再読しては巧緻なプロットに唸る。では、新鋭が放つ超絶の問題作をどうぞ!(粗筋紹介より引用)
 1998年発表。1999年9月、邦訳刊行。

 

 「巧緻を極めたプロット」と書かれている割に600ページを超える厚さだから、正直どうなんだろうと思いながら読み進める。だって、厚ければ厚いほど、「巧緻を極めた」という言葉が似合わないじゃないですか。すごい偏見かもしれませんが、プロットに技を仕掛けた作品って、そんなに長いイメージがないんですよ。長ければ長いほど筆を費やすことができる分、描写が詳細になっていって、つまらなくなっていくんですよね。ということでそんな偏見な予想、当たっていました。長すぎます。
 正直ホラー映画が苦手なので、その辺の描写も苦手なんですが、まあそれは置いておくとしても、もっと簡潔に描くことができたんじゃないですかね。その方が、ラストはよっぽど驚いたと思うんですが。
 ごめん、長すぎたという印象しかない。評価されている作品だとは知っているけれど。

『お笑いスター誕生!!』の世界を漂う

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お笑いスター誕生!!」新規情報を追加。B&Bの漫才です。これだけ早口でテンポよく進む漫才、最近は見たことないな。細かい矛盾もなんのその、屁理屈を云いながらも勢いとテンポで思わず笑わせてしまう漫才、久しぶりに見てみたいです。