正直に言っちゃうと、年末の忙しい時にどさくさに紛れて執行してしまっている、という感が強い。死刑制度を存続させるなら、もっと堂々としていればいいのにと思ってしまう。
それはともかく、日弁連やアムネスティ、真宗大谷派あたりが毎度のごとく抗議声明を出しているのだが、江川紹子が言うように、死刑判決が出た時点で抗議するべきだ。それも裁判所の前でだ。そのほうがよっぽどアピールになる(昔は、判決時に裁判所の傍聴席から抗議していたケースがあった)。それができないのは、被害者遺族や犯罪を許さない世間の目が怖いからだろう。なんのことはない、こそこそしているのは彼らも一緒だ。
エリザベス・フェラーズ『細工は流々』(創元推理文庫)
ある晩、突然トビーを訪ねてきた娘は、理由は聞かずに15ポンド貸してくれないか、といった。翌日、トビーは匿名の男からの電話で、彼女が殺されたことを知る。“時々、殺してやりたくなる”くらい、お人好しで人を疑うことを知らなかった彼女が、どんなトラブルに巻き込まれていたというのか? 警察に嫌がられながらも、現場となった部屋を調べたところ、奇妙な仕掛けが見つかった。どうも、推理小説に出てくるようなトリックをいろいろ試している奴がいるらしい。はたしてその正体は? そして、事件との関係は? 大好評のシリーズ第三弾。(粗筋紹介より引用)
1940年、発表。1999年12月、創元推理文庫より邦訳本刊行。
トビー・ダイクシリーズ第三弾。『猿来たりなば』は読んでいるのだが、『自殺の殺人』は買ってあったはずなのにどこにも見当たらない。ということで、先に見つけたこの本を読むことにした。もっとも、実際には本作品は第二作で、『自殺の殺人』は第三作、『猿来たりなば』は第四作。だからまあ、いいか。<br>
トビーとジョージのねじくれた関係は本作でも健在。被害者も容疑者も癖のある人たちばかり。おまけに色々なところに機械トリックが仕掛けられている。なんとまあ、ひねくれた設定。英国流のユーモアで、本格ミステリを皮肉たっぷりに書いたらこうなる、という典型的な作品かもしれない。きちんと伏線も張られ、明快に犯人が導かれるのに、こうもトビーとジョージの行動と言動に笑えてしまうのはなぜか。これが英国ミステリなんだろうな。
英国流のユーモアが苦手なんだが、本作は楽しく読むことができた。逆に洗練すぎていないほうが笑えるのかな。
『お笑いスター誕生!!』の世界を漂う
http://hyouhakudanna.bufsiz.jp/star.html
「お笑いスター誕生!!」新規情報を追加。おぼん・こぼんのネタです。このころは仲良かったと思うんだけどな。
映画を見に行った
あまり見ることはないのだが、それでも年に2,3本は見ている。藤子ファンなので、とりあえず『ドラえもん』の新作は欠かせない。
『屍人荘の殺人』を今日見たのだが、ある程度原作通りで安心。なんで永田裕二が出たのだろう。ただ、尺の都合もあるのだろうけれど、出目と高木がロックフェスから逃げてきた客に変更するなど改変したところが悉くつまらない。剣崎比留子が推理を披露するときに雲竜型を披露するなども、監督は面白いと思ったのかもしれないが、鬱陶しいだけだった。特に最後のシーン、あの状況下で有り得ないでしょう。もうちょっと何とかならなかったかな。これでも第二作も映画化するのかな。
その後、『ルパン三世 THE FIRST』も見たが、こっちは面白かったな。ルパンらしいルパンというか。ただ、どうしても過去のルパンが見え隠れするのは、仕方のないことなのかな。
西村健『ヤマの疾風』(徳間文庫)
昭和四十四年、高度経済成長の只中。華やかな世相を横目に筑豊の主要産業である炭鉱は衰退の一途。しかし荒くれ者たちの意気は盛んだった。全域に威を振るうのは海衆商会。その賭場で現金強奪事件が起きる。主犯はチンピラの菱谷松次だ。面目を潰された若頭・中場杜夫は怒りに震える。二人の激しい衝突はやがて筑豊ヤクザ抗争の根底を揺さぶることに――。感動の第十六回大藪春彦賞受賞作。(粗筋紹介より引用)
2013年9月、徳間書店より単行本刊行。2014年、第16回大藪春彦賞受賞。2015年2月、文庫化。
猛牛というあだ名を持つ父を炭鉱事故で亡くした飛車松こと菱谷松次、在日韓国人三世のマッコリこと金永浩、病的なほど女好きなゼゲンこと俊堂忠虎、ゼゲンの彼女で部落出身の江原京子。自由気ままに生きているチンピラ三人組+1人。筑豊を舞台にしたチンピラたちの青春アクションドラマといった作品。まあ、はっきり言っちゃうと厄介者でしかないのだが、それでも読んでいるうちに彼らに引き込まれてしまうから不思議だ。ヤクザやチンピラ、さらにそれを取り巻く人々も、善玉は気持ちのいい人で、悪玉は性根の腐った悪いやつ。ここまで徹底してわかりやすく書かれると、どうしても感情移入してしまうよね。ただのチンピラが暴れまわるだけかと思ったら、徐々に落ちぶれていく炭鉱の歴史や問題点なども所々に織り込まれ、いつしか筑豊のヤクザ抗争につながっていくという、スケールの大きな話になっていくのだが、テンポもよくユーモアが漂っているせいか、深刻さがなく、軽快に読むことができ、さらに読後感がいい。タイトル通り、あっという間に駆け抜けていった風のような男が飛車松であった。
これは楽しく読んだ。この明るさは大藪春彦にはないものだが、その点を除けばアクションたっぷりの本作が受賞するのもうなずけるだろう。