平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

漂泊旦那の日記です。本の感想とサイト更新情報が中心です。偶に雑談など。

望月守宮『無貌伝~双児の子ら~』(講談社ノベルス)

 

無貌伝 ~双児の子ら~ (講談社ノベルス)

無貌伝 ~双児の子ら~ (講談社ノベルス)

 

  人と“ヒトデナシ”と呼ばれる怪異が共存していた世界――。名探偵・秋津は、怪盗・無貌によって「顔」を奪われ、失意の日々を送っていた。しかし彼のもとに、親に捨てられた孤高の少年・望が突然あらわれ、隠し持った銃を突きつける! そんな二人の前に、無貌から次の犯行予告が!! 狙われたのは鉄道王一族の一人娘、榎木芹――。次々とまき起こる怪異と連続殺人事件!“ヒトデナシ”に翻弄される望たちが目にした真実とは!?(粗筋紹介より引用)
 2008年、第40回メフィスト賞受賞。2009年1月、講談社ノベルスより刊行。

 

 「守宮」と書いて「やもり」と呼ぶ。プロフィールは一切不明。
 戦前の日本が舞台と思われるが、“ヒトデナシ”という得体のしれない怪異が混在する世界が舞台。主人公は古村望という15歳の少年。秋津承一郎の助手となり、依頼のあった榎木家に行く。
 顔を奪うというのが、実際に奪われるという設定なので、そこで少しげんなり。しかもその時点までの知り合いからは姿も声も認知されなくなるという設定で、被害者は2週間以内に死んでしまう。しかし秋津だけは今も生きているという設定。まあ細かく設定しているな、いかにも続編か番外編当たりに書きますよ、みたいなあざとさがあまり好きになれない。
 とまあ、あまり読む気が起きない状態で読み進めてみると、意外にも一応本格ミステリっぽい内容になっているのでちょっと驚く。連続殺人事件と謎解きがあるのだが、残念ながら推理らしい推理はない。なぜこの犯人にたどり着いたのか、というところが思いつきに近いので、拍子抜け。これでトリックや推理があったら、もう少し楽しめたんだけどね。長いわりにヒロイン以外の描写も今一つで、誰が誰なんだか状態だったし。
 結局続編前提の謎てんこ盛り「だけ」の作品。まあ、シリーズとして書くのならいいんじゃないのか、といった程度。あまり興味はひかれなかった。
 ちょっと確認してみると、長編はこのシリーズ以外は書いていない模様。数冊出して、2014年には完結したのかな。まあ、読む気は起きないけれど。

「推理クイズ」の世界を漂う

http://hyouhakudanna.bufsiz.jp/mystery-quiz/index.htm

「その他の推理クイズ本作品リスト」に感想、画像他を追加。

3年ぶりの更新(笑)。今まで取り上げてきたジャンルから考えるとちょっと違うんだけど、タイトルに“推理クイズ”ってあったので、確信犯的にリストに入れてしまった(苦笑)。「おはなし推理ドリル」とか入れようかどうか、迷っているところ。

東野圭吾『沈黙のパレード』(文藝春秋)

沈黙のパレード

沈黙のパレード

 

 突然行方不明になった町の人気娘が、数年後に遺体となって発見された。容疑者は、かつて草薙が担当した少女殺害事件で無罪となった男。だが今回も証拠不十分で釈放されてしまう。さらにその男が堂々と遺族たちの前に現れたことで、町全体を憎悪と義憤の空気が覆う。秋祭りのパレード当日、復讐劇はいかにして遂げられたのか。殺害方法は? アリバイトリックは? 超難問に突き当たった草薙は、アメリカ帰りの湯川に助けを求める。(粗筋紹介より引用)
 2018年10月、書き下ろし刊行。ガリレオシリーズ第9作。

 

 久しぶりとなるガリレオシリーズ。湯川はアメリカ帰りという設定にすることで、今までの隙間を埋める形となっている。
 読んでいて思うのは、東野圭吾ってあざといなって。正直言って、こういうパターンで来るだろうな、なんて思いながら読めてしまうところがあるんだけど、それでも結局読み進めてしまう面白さがそこにある。そのくせ、いやになるくらいひっくり返し続けるところもある。単純にハッピーにならないところも、嫌らしい。それでも読んでしまうんだよな。
 正直言っちゃうと、被害者の女性がああいう形だったのもどうかと思ってしまうわけで。なんか、読んでいる人を嫌な思いにさせちゃうな、というか。
 トリック自体は面白かったかな。確かにこれで謎が面白くないと、ただの気持ち悪い作品になってしまう。
 なんだかんだ言っても、キャラクターの関係性を少しずつ触れながら書き進める展開も、嫌らしいと思いつつ、うまいなあと思ってしまうわけで。なんかテクニックだけで書いている気もしつつ、それでも面白く読めてしまうんだから、すごいなあとは思った。

犯罪の世界を漂う

http://hyouhakudanna.bufsiz.jp/climb.html

無期懲役判決リスト 2019年度」に1件追加。

「ノンフィクションで見る戦後犯罪史」に事件概要を追加。

「ノンフィクションで見る戦後犯罪史」は8か月ぶりの更新。数年前は毎日パソコンを部屋で見ていたけれど、最近はダメ。もうすぐ寝てしまうぐらい、疲れている。

 それにしても、大崎事件の再審請求棄却にはびっくり。最高裁も方針展開したかな。差戻じゃないところに、簡単に再審をさせないよ、という強い意志を感じる。じゃないと、5人全員が棄却で一致しないよね、絶対。

 

 

戸田義長『恋牡丹』(創元推理文庫)

恋牡丹 (創元推理文庫)

恋牡丹 (創元推理文庫)

 

  北町奉行所に勤め、若き日より『八丁堀の鷹』と称される同心戸田惣左衛門と息子清之介が出合う謎の数々。神田八軒町の長屋で絞殺されていたお貞。化粧の最中の凶行で、鍋には豆腐が煮えていた。長屋の者は皆花見に出かけており……「花狂い」。七夕の夜、吉原で用心棒を頼まれた惣左衛門の目の前で、見世の主が殺害された。衝立と惣左衛門の見張りによって密室状態だったはずなのだが……「願い笹」。惣左衛門と清之介親子を主人公に描く、滋味溢れる時代ミステリ連作集。移りゆく江戸末期の混乱を丁寧に活写した、第27回鮎川哲也賞最終候補作。(粗筋紹介より引用)
 2018年10月、刊行。

 

 第27回鮎川哲也賞からは、受賞作『屍人荘の殺人』、優秀賞『だから殺せなかった』も刊行されている。近年まれにみるレベルの高い戦いだったようだ。とはいえ、三冊とも読んでみると、やはり受賞作が一枚も二枚も上手だなという印象を受けた。選評を読んだ時から本作には期待していたのだが、やはり受賞するには今一つだった残念なところがある。
 帯にもある通り、下手人探し、密室の謎、不在証明崩し、隠された動機の4つの謎が解き明かされる連作本格ミステリ短編集。江戸時代ということもあってか、謎自体はやや弱い気もするが、それでも十分楽しむことができた。背景や人物の描写も悪くないし、それ以上に雰囲気が心地よい。戸田惣左衛門が『八丁堀の鷹』と言われるような怖さ、鋭さが見られなかったのはとても残念ではあったものの、一つ一つの短編自体は面白かった。
 ところが問題は、これが連作短編集なところ。最初の短編「花狂い」で清之介は十一歳。次の「願い笹」はすぐ後の話だと思われるが、その次の「恋牡丹」は惣左衛門が隠居し、清之介が北町奉行所に勤めている。最後の「雨上り」は江戸幕府が倒れた時代で、清之介は25歳。1年前に惣左衛門の後輩となる同心菊池の娘・加絵と結婚している。せっかく一つ一つの短編がゆったりとした心地よい感じの作品なのに、時の流れがあまりにも早すぎ。多分時代の流れの中の家族の姿を描きたかったのだろうが、本作品集に限って言えば余計なことだった。「花狂い」のころの惣左衛門と清之介の年齢かつ関係のまま、ほかの作品を読んでみたい。そうすることで、彼らの姿がより深く描かれることになり、共感も増しただろう。
 ジャンルとしては捕物帖。だったらもう少し同じ時代の作品を読んでみたい。本作品の内容だったら、それも可能だっただろう。本作品が受賞できなかった大きな理由は、絶対そこ。一つ一つの短編のつながりがあるようで断絶している結果になっているのが、非常に残念だった。次作があるのならば、その点を考えてほしい。そもそも捕物帖って、年齢重ねないところが売りなんだからさあ(勝手な決めつけ)。

疎外感に苛まれる

単に自分が悪いのだろうし、自分の性格的にダメなんだろうな。いや、勝手な思いだけなんだけど。仕事は忙しいし、こなしきれていないし。
どうでもいいけれど、「働き方改革」って結局、個人当たりの仕事量を減らす=人を増やすことをしないと、どうしようもないだろうと思う。工夫をしろ、無駄を減らせ。言うのは簡単だけど、言いっぱなしだよね、と思ってしまう。もちろん上の人も、さらに上の人から同じようなことを言われているだけなんだが。簡単にICT化とかいうけれど、そこに至るまでに残業を重ねたら意味がないだろうと思ってしまうし。
手塚治虫の言葉だったっけ。追い込まれたほうがいいアイディアが出るって。日本人って、結局そういう思考体系に陥っているような気がする。
以上、とりとめのない言葉でした。それにしても、2週間ぶりの更新かよ。何やっていたんだ、自分。ダメージの大きかった出来事も多かったし。